2018年4月1日日曜日

ヨーガスートラ 第四章

ヨーガスートラ 

第四章 


4.1 JANMAUSHADHI MANTRA TAPAH SAMADHI JAH SIDDHAYAH.  

神通力 -シッディ- は、前生においてなされた修行、あるいは薬草、あるいは真言 -マントラ-、あるいは苦行 -タパス-、あるいは三昧 -サマーディ- によってもたらされる。


4.2 JATYANTARA PARINANAH PRAKRITY APURAT. 

ひとつの生類から他の生類への転変は、自然 -プラクリティ- の流入によってひき起こされる。


4.3 NIMITTAM APRAYOJAKAM PRAKRITINAM VARANABHEDAS TU TATAH KSHETRIKAVAT.  

付帯的事象は、直接には自然の進化をひき起こすものではない。それらは、農夫のように -農夫が自分の田に水を引き入れるために、水路を塞いでいる物を取り除くように-、障害物を取り除くだけである。


4.4 NIRMANA CHITTANY ASMITA MATRAT.  

ヨーギーの我想 -アスミター- のみが -人為に- 発現する -その他の- 心の原因である。


4.5 PRAVRITTI BHEDE PRAYOJAKAM CHITTAM EKAM ANEKESHAM.  

発現した多くの心の働きはさまざまだが、大元であるヨーギーの心は、それら全てに対する命令者である。


4.6 TATRA DHYANAJAM ANASAYAM.  

-そのようにして発現した心のうち- 瞑想から生じたものだけが、カルマの刻印を免れている。


4.7 KARMASUKLAKRISHNAM YOGINAS TRIVIDHAM ITARESHAM.  

ヨーギーのカルマは白 -善- くも黒 -悪- くもない。しかし他の者の行為には、善と悪、そしてそれらの交じり合ったものの三種類がある。


4.8 TATAS TADVIPAKANUGUNANAM EVABHIVYAKTIR VASANANAM.  

これらの -行為- のうち、結実 -業報- のための好条件がそろったヴァーサナー -潜在記憶-  -習気- だけが、特定の生において発現する。


4.9 JATI DESA KALA VYAVAHITANAM APY ANANTARYAM SMRITI SAMSKARAYOR EKARUPATAT.  

欲望とその成就は、類・空間・時間によって隔てられているが、それらには連続性がある。 -欲望の- 印象と -欲望の- 記憶とは、同一だからである。


4.10 TASAM ANADITVAM CHASISHO NITYATVAT.  

生命欲は永遠であるので、印象もまた無始である。


4.11 HETU PHALASRAYALAMBANAIH SAMGRIHITATVAD ESHAM ABHAVE TADABHAVAH.  

印象は、原因・結果・基板・支持によって成立しているので、それら四者の消滅に伴い、これら -印象- も消える。


4.12 ATITANAGATAM SVARUPATOSTY ADHVA BHEDAD DHARMANAM.  

過去と未来は、位相差のゆえにそのような特性をもって現出しているところの、事象そのものの内にある。


4.13 TE VYAKTA SUKSHMAH GUNATMANAH.  

顕現の状態であれ精妙な状態であれ、それらの特性はグナ性 -グナとは性質のこと。 サットヴァ=純粋さ、知的性質. ラジャス=活発、激しさ、活動的性質. タマス=鈍い、怠惰な性質. - のものである。


4.14 PARINAMAIKATVAD VASTU TATTVAM.  

事象の自己同一性は、グナの転変の一律性に基づく。


4.15 VASTU SAMYE CHITTA BHEDAT TAYOR VIBHAKTAH PANTHAH.  

客体は同一であっても、それを受け止める心がさまざまであるから、認識はさまざまに異なるのである。


4.16 NA CHAIKA CHITTA TANTRAM VASTU TADAPRAMANAKAM TADA KIMSYAT. 

また、客体の存在は、ただひとつの心に依存しているのではない。もしそうであるならば、そのひとつの心がそれを認知しない場合、その客体はどうなるのか?


4.17 TADUPARAGAPEKSHITVACH CHITTASYA VASTU JNATAJNATAM.  

客体は、心がそれによって染められるか否かによって、その存在が知られたり知られなかったりする。


4.18 SADA JNATAS CHITTA VRITTAYAS TAT PRABHOH PURUSHASYAPARINAMITVAT.  

心の作用は、その主であるプルシャには常に知られている。プルシャは不変だからである。


4.19 NA TAT SVABHASAM DRISYATVAT.  

心は、自ら輝くものではない。それはプルシャに知覚される客体だからである。


4.20 EKA SAMAYE CHOBHAYANAVADHARANAM.  

こころは、主・客を同時に知覚することはできない。 -そのことから見ても、心は自ら輝くものではないことがわかる-


4.21 CHITTANTARA DRISYE BUDDHIBUDDHER ATIPRASANGAH SMRITISAMKARAS CHA.  

もし、ひとつの心がもうひとつの心によって知覚されるということがあり得るとするならば、それら -=心- は数限りなく在ることになって、結果として記憶の混乱が生ずるであろう。


4.23 DRASHTRI DRISYOPARAKTAM CHITTAM SARVARTHAM.  

心は、見るものと見られるものの両方から染められることによって、あらゆるものを理解する。


4.24 TAD ASAMKHYEYA VASANABHIS CHITTAM API PARARTHAM SAMHATYA KARITVAT.  

無数の欲望を持ってはいるが、心は他者 -プルシャ- のために存在するのである。それ -心- はプルシャと連合してはじめて機能することができるからである。

2018年3月1日木曜日

ヨーガスートラ 第三章

ヨーガスートラ 

第三章


3.01 DESABANDHAS CHITTASYA DHARANA. 

集中 -ダーラナー- とは、心をひとつの場所、対象、あるいは観念に縛り付けておくことである。


3.02 TATRA PRATYAYAIKATANATA DHYANAM. 

瞑想 -ディヤーナ- とは、そうした対象への認識作用の絶え間ない流れである。


3.03 TAD EVARTHAMATRA NIRBHASAM SVARUPA SUNYAM IVA SAMADHIH. 

三昧 -サマーディ- とは、この瞑想 -ディヤーナ- そのものが形を失ったかのようになり、その対象がひとり輝くときのことである。


3.04 TRAYAM EKATRA SAMYAMAH. 

同一の対象についてこれらの三者、すなわち 集中 -ダーラナー- 、瞑想 -ディヤーナ- 、三昧 -サマーディ- をなすことが、サンヤマ -綜制- と呼ばれる。


3.05 TAJJAYAT PRAJNALOKAH. 

サンヤマ -綜制- の終了によって、知の光が生まれる。


3.06 TASYA BHUMISHU VINIYOGAH. 

サンヤマは段階的になされるべきである。


3.07 TRAYAM ANTARANGAM PURVEBHYAH. 

これらの三支 -集中、瞑想、三昧- は、それ以前の五支 -禁戒、勧戒、座法、調気、制感- よりも内的である。


3.08 TAD API BAHIRANGAM NIRBIJASYA. 

これらの三支さえも、無種子三昧 -ニルビージャ・サマーディ- にとっては外的である。


3.09 VYUTTHANA NIRODHA SAMSKARAYOR ABHIBHAVA PRADURBHAVAU NIRODHA KSHANA CHITTANVAYO NIRODHA PARINAMAH. 

生起してくる印象 -サンスカーラ:雑念- は、それに代わる新たな心の作用を生むところの抑止の努力の出現によって止滅される。この、新たな作用と心との結合の刹那が、ニローダ・パリナーマ -止滅転変- である。


3.10 TASYA PRASANTA VAHITA SAMSKARAT. 

ニローダ・パリナーマの持続状態は、習慣づけによって確実となる。


3.11 SARVARTHATAIKAGRATAYOH KSHYAYODAYAU CHITTASYA SAMADHIPARINAMAH. 

心の散動が滅衰して一点集中が実現してくると、サマーディ・パリナーマ -サマーディへの進展:三昧転変- が現れる。


3.12 SANTODITAU TULYAPRATYAYAU CHITTASYAIKAGRATAPARINAMAH. 

また、過去となってひいていく想念と、今まさに生起しつつある想念が等似であるならば、それがエーカーグラター・パリナーマ -一点集中:専念転変- である。


3.13 ETENA BHUTENDRIYESHU DHARMA LAKSHANAVASTHA PARINAMA VYAKHYATAH. 

これ -以上の三つのスートラ- によって、物質元素と感官に関する、可視的特性と時間的位相と状態の転変も説明された。


3.14 SANTODITAVYAPADESYA DHARMANUPATI DHARMI. 

本性的に、潜伏、生起、非顕現の諸相を経ていくのは、根底体 -プラクリティ- である。


3.15 KRAMANYATVAM PARINAMANYATVE HETUH. 

それらの諸相の連続が、進化 -転変- に諸段階の存在する理由である。


3.16 PARINAMA TRAYA SAMYAMAD ATITANAGATA JNANAM. 

進化のその三段階にサンヤマ -綜制- を施すことによって、過去と未来についての知が生まれる。


3.17 SABDARTHA PRATYAYANAM ITARETARADHYASAT SAMKARAS TAT PRAVIBHAGA SAMYAMAT SARVA BHUTA RUTA JNANAM. 

通常は、語と、その意味と、その語の表象内容とを混同するために混乱が生ずる。いかなる生類により発された語 -あるいは音- でも、それにサンヤマを施すことによって、その意味を知ることができる。


3.18 SAMSKARA SAKSHATKARANAT PURVA JATIJNANAM. 

サンヤマによって自らの心的印象 -サンスカーラ- を直感することにより、前生についての知識が得られる。

3.19 PRATYAYASYA PARACHITTA JNANAM. 

他人の身体の区別的特長にサンヤマを施すことによって、その人の想念を知ることができる。


3.20 NA CHA TAT SALAMBANAM TASYAVISHAYI BHUTATVAT. 

だがそれは、その人の心の中でその想念を支えているもの -例えばその思いの背後にある動機等- にまでは及ばない。それはそのサンヤマの対象とはならないからである。


3.21 KAYARUPA SAMYAMAT TADGRAHYA SAKTI STAMBHE CHAKSHUH PRAKASAMPRAYOGENTARDHANAM. 

自らの身体の形態にサンヤマを施すと、観察者の眼の光を遮ることによって知覚の力に干渉し、身体を見えなくすることができる。


3.22 ETENA SHABDADYANTARDHANAM UKTAM. 

同様にして、音その他 -触、味、香- の消失も説明される。


3.23 SOPAKRAMAM NIRUPAKRAMAM CHA KARMA TAT SAMYAMAD APARANTA JNANAM ARISHTEBHYO VA. 

カルマには、速やかに発現するものと徐々に発現するものとの二種類がある。それらあるいは死の前兆にサンヤマを施すことによって、死期を知ることができる。


3.24 MAITRYADISHU BALANI. 

慈その他の徳性にサンヤマを施すことによって、それらを発する力を得る。


3.25 BALESHU HASTI BALADINI. 

象その他の動物の力にサンヤマを施すことによって、それらの力を得ることができる。


3.26 PRAVITTYALOKA NYASAT SUKSHMA VYAVAHITA VIPRAKRISHTA JNANAM. 

内なる光へのサンヤマによって、微細なもの、秘匿されたもの、遠方のものを知ることができる。 -例えば原子のように微細なもの、隠された財宝、遠隔の地など-


3.27 BHUVANA JNANAM SURYE SAMYAMAT. 

太陽にサンヤマを施すことによって、太陽系全体を知ることができる。


3.28 CHANDRE TARA VYUHA JNANAM. 

月にサンヤマを施すことによって、星の配置を知ることができる。


3.29 DHRUVE TADGATI JNANAM. 

北極星にサンヤマを施すことによって、星の運行を知ることができる。


3.30 NABHI CHAKRE KAYA VYUHA JNANAM. 

臍の神経叢 -チャクラ- にサンヤマを施すことによって、身体の構造を知ることができる。


3.31 KANTHA KUPE KSHUT PIPASA NIVRITTIH. 

喉の窪みにサンヤマを施すことによって、飢えと渇きが止まる。


3.32 KURMANADYAM STHAIRYAM. 

クールマ・ナーディ -喉の下方にある亀の形をした微細な管- サンヤマを施すことによって、瞑想の座位の不動性が達成される。


3.33 MURDHA JYOTISHI SIDDHA DARSANAM. 

脳天の光 -サハスラーラ・チャクラ- にサンヤマを施すことによって、神人 -シッダ- たちを見ることができる。


3.34 PRATIBHAD VA SARVAM. 

また、 -純粋な生活を通じて- 自然に発露する知 -プラティバー- の中で、全ての力はおのずから現れる。


3.35 HRIDAYE CHITTA SAMVIT. 

心臓にサンヤマを施すことによって、心 -チッタ- を知ることができる。


3.36 SATTVA PURUSHAYORATYANTASAMKIRNAYOH PRATYAYAVISESHO BHOGAH PARARTHAT SVARTHASAMYAMAT PURUSHA JNANAM. 

知性 -サットヴァ:覚- とプルシャ -あるいはアートマン- とはまったく別のものであり、知性がプルシャのために存在するのに対して、プルシャはそれ自身のために存在する。これを峻別しないところに経験の全てがあるのであって、この区別にサンヤマを行なうことによって、プルシャの知があらわれる。


3.37 TATAH PRATIBHA SRAVANA VEDANADARSASVADA VARTA JAYANTE. 

この知 -プラティバー- より、任意の直感による超自然的聴覚・触覚・視覚・味覚・嗅覚が生ずる。


3.38 TE SAMADHAV UPASARGA VYUTTHANE SIDDHAYAH. 

これら -超自然的感覚- は、 -ニルビージャ- サマーディにとっては障害であるが、世俗的追及にあってはシッディ -力、霊能- である。


3.39 BANDHA KARANA SAITHILYAT PRACHARA SAMVEDANACH CHA CHITTASYA PARASARIRAVESAH. 

-心を身体に縛り付けている- 原因を緩めることによって、また、心の働きの筋道を知ることによって、他人の身体に侵入することができる。


3.40 UDANA JAYAJ JALA PANKA KANTAKADISHV ASANGA UTKRANTIS CHA. 

ウダーナ気 -上向きの生命エネルギー- を支配することによって、水、沼沢、刺などの上に浮揚することができる。


3.41 SAMANA JAYAJ JVALANAM. 

サマーナ気 -均等化のエネルギー- を支配することによって、身体が光輝に包まれる。


3.42 SROTRAKASAYOH SAMBANDHA SAMYAMAD DIVYAM SROTRAM. 

耳と虚空 -エーテル- との関係にサンヤマを施すことによって、超常的な聴覚が得られる。


3.43 KAYAKASAYOH SAMBANDHA SAMYAMAL LAGHU TULA SAMAPATTES CHAKASA GAMANAM. 

身体と虚空との関係にサンヤマを施すことによって、綿の繊維のように軽くなり、隠して虚空を飛ぶことができる。


3.44 BAHIR AKALPITA VRITTIR MAHAVIDEHA TATAH PRAKASAVARANA KSHAYAH. 

身体の外にあって -身体によっては- 確認されない想念波動に対してサンヤマを施すこと -マハー・ヴィデハすなわち大脱身- によって、自己の光を覆う緬紗が破壊される。


3.45 STHULA SVSRUPA SUKSHMANVAYARTHAVATTVA SAMYAMAD BHUTAJAYAH. 

粗大及び微細な元素、それらの本質、相関性、合目的性にサンヤマを施すことによって、それらの元素に対する支配が得られる。


3.46 TATONIMADI PRADURBHAVAH KAYA SAMPAT TADDHARMANABHIGHATAS CHA. 

それにより、アニマその他のシッディがもたらされ、身体の完成が遂げられて、その機能が諸元素の影響による妨げを受けなくなる。


3.47 RUPA LAVANYA BALA VAJRASAMHANANATVANI KAYASAMPAT. 

端麗、優雅、強靭、金剛石のごとき堅固さが、身体の完成である。


3.48 GRAHANA SVARUPASMITANVAYARTHAVATTVA SAMYAMAD INDRIYA JAYAH. 

諸感覚の把握作用、それらの本質、それらの目的と、我想との関係等にサンヤマを施すことによって、諸感覚に対する支配がえられる。


3.49 TATO MANOJAVITVAM VIKARANABHAVAH PRADHANA JAYAS CHA. 

それより身体は、心と同じ速さで動く力、感覚の補助なしに機能する力、そして根本原因 -プラクリティ- に対する完全な支配を得る。


3.50 SATTVA PURUSHANYATAKHYATIMATRASYA SARVA BHAVADHISHTHATRITVAM SARVAJNATRITVAM CHA. 

サットヴァ -純粋な反映性- と自己との差異を認識することによって、存在のあらゆる様態に対する至上位 -全能- -それは全知である-を得る。


3.51 TAD VAIRAGYAD API DOSHA BIJA KSHAYE KAIVALYAM. 

それ=これら全てのシッディ に対してさえ無執着であることにより、束縛の種子が破壊され、かくしてカイヴァリャ -独存- の状態が顕現する。


3.52 STHANYUPANIMANTRANE SANGA SMAYAKARANAM PUNAR ANISHTA PRASANGAT. 

ヨーギーは、天人からの賞賛といえどもこれを受容するべきではなく、慢心の笑みさえ浮かべるべきではない。ふたたび望ましくないものに補足される恐れがあるからである。


3.53 KSHANA TAT KRAMAYOH SAMYAMAD VIVEKAJAM JNANAM. 

連続する刹那のまさしくひとつにサンヤマを施すことによって、識別知が現れる。


3.54 JATI LAKSHANA DESAIR ANYATANAVACHHEDAT TULYAYOS TATAH PRATIPATTIH. 

かくして、種類、特徴、位置などが酷似しているために見分けのつかないものが、識別されるようになる。


3.55 TARAKAM SARVA VISHAYAM SARVATHA VISHAYAM AKRAMAM CHETI VIVEKAJAM JNANAM. 

全ての対象のあらゆる在り方を同時的に理解するその識別知が、解脱をもたらすところの直感知である。


3.56 SATTVA PURUSHAYOH SUDDHI SAMYE KAIVALYAM. 

静穏な心 -サットヴァ- の清浄さが、自己のそれと等しくなるに至ったとき、そこにカイヴァリャ -絶対、独存位- がある。


ヨーガスートラ 第三章 おわり

朗読もあります。聴きながらお読みください。